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トランスレーショナルリサーチ推進部門 天然薬物開発分野


TEL:076-434-7640

[English] http://www.inm.u-toyama.ac.jp/en/departments/15_ndd.html
[Japanese] http://www.inm.u-toyama.ac.jp/jp/departments/15_ndd.html
[部門・分野ホームページ] http://sureshawale.blogspot.com/

Associate Professor Suresh Awale
准教授 スレス アワレ



研究概要

 本分野では、主として、腫瘍微小環境におけるがん細胞の特性(例、栄養飢餓に対する耐性など)を標的とする天然抗がん物質の探索を目的として研究を行なっている。


伝統的な医学知識と現代先端科学技術を繋げ、天然薬物資源から新たながん治療薬を開発する
 がん細胞は一般的に無秩序かつ急速に増殖するが、腫瘍血管系は脆弱で不規則に形成されるため栄養や酸素の欠乏した環境に曝されることになる。しかしながら、がん細胞は低栄養・低酸素といった極限状態に置かれると、エネルギー代謝を変えることによって生存するという特有の耐性機構を示している。特に、PANC-1のようなヒト膵臓がん細胞はこのような耐性を獲得しており、低栄養・低酸素といった厳しい環境下においても長期間の生存が可能となっている。したがって、がん細胞の栄養飢餓耐性を解除する化合物(anti-austerity agent、抗緊縮薬)は抗がん剤探索の新たな目標物であると考えられる。
 これまで膵臓がんに対する有効な治療薬はなく、従来の抗がん剤に対 しては耐性を示している。ほとんどの膵臓がん患者は診断された後速やかに転移を起こし、短期間で死に至る。膵臓がんは現在、生存期間中央値が6ヶ月未満、5年生存率が他のがんと比べて最も低い(5.5%)であり、がん関連死の原因として4位を占めている。従って、がん細胞の栄養飢餓耐性を標的とする天然抗がん物質を見つけ出すことは我々の重要な研究目標の一つである。この目標を達成するために、我々は積極的に以下の研究を実施している。

 

1. 天然薬用資源の膵臓がん細胞に対する抗がん活性のスクリーニング
  和漢生薬、アーユルヴェーダ生薬など各地で伝統薬として用いられる薬用資源について、栄養飢餓状態におけるヒト膵臓がん細胞PANC-1に対する抗がん活性のスクリーニングを行う。
2. 生理活性を指標とした新規抗がん候補物質の探索
  がん細胞栄養飢餓耐性を解除する活性を有する生薬について、活性を指標に各種最先端的なクロマトグラフィ(例、シリカゲル、ODS、高性能TLC、MPLC、HPLCなど)による成分の分離・精製を行い、分光学的データ(例、NMR、MS、UV、IR、CDなど)に基づく成分の構造決定を行う。リード化合物については、他のヒト膵臓がん細胞(例、MIA Paca2、KLM-1、NOR-P1、 Capan-1、 PSN-1など)からなる細胞パネルでの評価も行うとともに、活性成分についての構造活性相関や機能性構造についての研究も実施する。有望な候補物質は、ヒト膵臓がんのマウスモデルを用いたin vivoでの抗腫瘍活性効果の評価を行う。
3. 定量的メタボローム解析による抗がん剤の作用機序の解明
  がん細胞におけるタンパク質の発現や作用についてはよく研究されている一方、がん細胞の代謝物(例、有機酸、アミノ酸、糖類、脂質など)はあまり注目されていない。栄養飢餓耐性を有するがん細胞においては通常とは異なるエネルギー代謝が行われていると推察されるため、細胞内の低分子を含めたがん細胞代謝物の網羅的な分析はanti-austerity agentの作用機序の解明に有用であると考える。従って、我々は、がん細胞の生存に関与する主要なタンパク質の研究を行うとともに、FT-NMR及びFT-MSを用い、定量的なメタボローム解析も実施している。
 我々は、現代の先端科学技術を用いた研究により、伝統医学知識や薬用植物が新たな抗がん剤、特に有効な治療法がない膵臓がんに対する治療薬の開発の手掛かりとなることを確信している。
【キーワード】
  天然薬物、 創薬開発研究、伝統医学、漢方薬、天然産物、核磁気共鳴(NMR) 、フーリエ変換質量分析法 (FT-MS) 、構造解明、ライフサイエンス、がん研究、Antiausterity戦略、作用機序、化学生物学、がんメタボロミクス、バイオマーカーの探索
   
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