UNIVERSITY
OF TOYAMA
富山大学
和漢医薬学総合研究所天然物化学領域Institute of Natural MedicineNatural Products Chemistry
天然資源探索を象徴する海洋・熱帯植物・海綿・生薬市場の写真
RESEARCH

天然物の可能性を、分子から拓く。

天然物の探索、生合成と作用機構の解明、
酵素機能の改変、そして創薬シーズへの展開まで。
天然物化学を基盤に、多角的な研究を進めています。

Research Themes

研究テーマ
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01

Galanthamine Analogs

生合成工学によるガランタミンアナログの創出

ヒガンバナ科植物由来のガランタミンは、アルツハイマー型認知症の治療薬として用いられている天然物です。ガランタミンにはアセチルコリンエステラーゼ阻害作用に加え、弱いながらも神経新生や軸索再伸長を促す作用が報告されています。私たちは、こうした神経機能の回復に関わる作用を高めたアナログを創出できれば、認知症をはじめとする神経変性疾患に対する新たな治療薬の開発につながるのではないかと考えています。

そこで、ガランタミンをはじめとするヒガンバナ科アルカロイドの生合成酵素について、基質特異性や生成物特異性、それらを決定する分子機構を解明し、酵素機能を自在に制御することを目指しています。さらに、基質アナログと機能改変酵素を組み合わせた生合成工学により、天然には存在しない多様なガランタミンアナログを創出し、その生物活性を評価することで、神経機能の回復を目指す新たな創薬シーズの発見につなげます。

02

Cannabinoid Analogs

生合成酵素の機能改変とカンナビノイドアナログの創出

植物は、限られた生合成酵素を用いて多様なカンナビノイドを作り出します。カンナビノイドには医薬品として有用な薬理活性を示すものがある一方、精神作用などが医薬品としての利用を制限する場合があります。私たちは、その生合成を担う酵素の基質認識機構と反応機構を明らかにし、酵素の機能を自在に制御することを目指しています。

さらに、生合成酵素の機能改変や非天然型基質との組み合わせにより、天然には存在しないカンナビノイドアナログを創製することで、精神作用を軽減したカンナビノイド医薬品の開発や、新たな生物活性・創薬シーズにつながる分子空間の開拓に取り組んでいます。

03

2OG Oxygenases

天然阻害剤の探索と阻害機構の超精密解析

2-オキソグルタル酸依存性酸素添加酵素(2OGX)は、低酸素応答をはじめとするさまざまな生命現象を制御する重要な酵素群です。これらの中には疾患と密接に関連するものもあります。私たちは、それらの疾患の創薬標的となる2OGXに対する新たな天然阻害剤を探索しています。

さらに、酵素-阻害剤複合体のX線結晶構造解析を通して、阻害剤が酵素をどのように認識し機能を制御するのかを原子レベルで解明し、より選択性の高い阻害剤や創薬シーズの設計につなげることを目指しています。

04

Arsenic Natural Products

ヒ素含有天然物の生合成経路の解析

ヒ素を含む天然物に着目し、その生合成に関与する酵素と反応経路を明らかにすることで、自然界におけるヒ素含有分子の形成機構を解明します。

05

Anti-inflammatory Natural Products

天然資源からの抗炎症活性化合物の探索

炎症は、感染や組織傷害などから生体を守るために不可欠な防御反応ですが、過剰あるいは慢性的な炎症は、さまざまな疾患の発症や進行に関与します。特に慢性炎症は、関節炎などの炎症性疾患だけでなく、動脈硬化、糖尿病、がん、アルツハイマー病などの加齢に伴う疾患とも深く関係しており、炎症を適切に制御することは健康の維持や疾患の予防・治療において重要です。

私たちは、古くから炎症性疾患の治療に用いられてきた薬用植物をはじめとする多様な天然資源に着目し、抗炎症活性を示す天然物の探索、単離・構造決定、およびその作用の解析に取り組んでいます。天然物が持つ多様な化学構造を生かして、既存の抗炎症薬とは異なる特徴を持つ活性化合物を見いだし、炎症性疾患に対する新たな創薬シーズの発見につなげることを目指しています。

06

Cage-type Carbazoles

ケージ化カルバゾールの合成と生物活性評価

天然物に見られる特徴的な三次元構造は、その生物活性を大きく左右することがあります。なかでも、ガンボギン酸などに見られる複雑なかご型構造(caged structure)は、強い生物活性に関与する特徴的な構造として知られています。一方、このようなかご型構造を持つアルカロイドはこれまでほとんど知られておらず、アルカロイドにかご型構造を導入することで、どのような新しい生物活性が生まれるのかは未解明です。

私たちは、代表的なアルカロイド骨格の一つであるカルバゾールに着目し、酵素反応と有機合成を組み合わせて、天然には存在しない新たなかご型カルバゾールを創製することを目指しています。さらに、in silico解析による標的候補の探索、生物活性評価、X線結晶構造解析による分子認識機構の解明を組み合わせ、構造と活性の関係を明らかにします。得られた知見をもとに、より高い活性や選択性を持つ誘導体へ展開し、特徴的な三次元構造を活用した新たな創薬シーズの発見につなげることを目指しています。

Research Highlights

代表的な研究成果
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5-アザシチジン生合成酵素AzcAとAzcB/CのX線結晶構造解析

AzcAによる新規骨格編集反応とAzcB/Cによる異例の脱炭酸反応の構造基盤を明らかにし、5-アザシチジン生合成機構の解明に貢献しました。

AzcAとAzcB/Cによる5-アザシチジン生合成機構の研究成果詳細図
Nat. Catal. 2026. DOI: 10.1038/s41929-026-01611-x.

tRNA依存型酵素Sba18とSbb17の結晶構造解析

ストレプトスリシン生合成に関わるSba18とSbb17の構造比較から、基質特異性を決める残基を明らかにしました。

tRNA依存型酵素Sba18とSbb17の研究成果詳細図
J. Am. Chem. Soc. 2026, 148, 12154–12165.

ヒガンバナアルカロイド生合成酵素OMTの機能改変

基質結合に伴うループ再配置とメチル化選択性の関係を解明し、希少アルカロイドの効率的生産につながる触媒改変に成功しました。

ヒガンバナアルカロイドOMTの研究成果詳細図
ACS Catal. 2024, 14, 11865–11880.

LassoペプチドMS-271生合成酵素MslHの構造・機能解析

C末端トリプトファンのD体化を担う金属依存酵素の触媒機構を構造生物学的に明らかにしました。

MslHの研究成果詳細図
Nat. Commun. 2023, 14, 4752.

沈香芳香成分の基本骨格形成酵素を同定

2-(2-フェニルエチル)クロモン類の骨格形成に関与するPEPCSを同定し、沈香の人為的生産系開発への展望を示しました。

沈香生合成研究の成果詳細図
Nat. Commun. 2022, 13, 348.

OACとTKSの機能改変による非天然型化合物の創出

X線結晶構造を基盤として活性中心を改変し、非天然型オリベトール酸関連化合物の生合成的創出を実現しました。

OACとTKSの機能改変研究の成果詳細図
Org. Lett. 2022, 24, 410.

ベトナム産Kaempferia marginataの伝統利用を化学的に検証

抗炎症活性成分の解析を通して、伝統的に利用される薬用植物の化学的特徴を明らかにしました。

Kaempferia marginata研究の成果詳細図
Phytochemistry 2022, 196, 113109; Phytochemistry 2023, 205, 113510.

ミャンマー伝統化粧品タナカの美白効果と成分解析

伝統化粧品素材の成分とメラニン産生抑制作用を解析し、その科学的根拠を検討しました。

タナカ研究の成果詳細図
Fitoterapia 2018, 127, 308; Fitoterapia 2019, 133, 35; Nat. Prod. Commun. 2019, 14, 113.

アサ由来オリベトール酸閉環酵素OACのX線結晶構造解析

基質のアルキル鎖長を認識する疎水性ポケットを同定し、カンナビノイド生合成酵素の機能改変基盤を築きました。

OAC構造解析の成果詳細図
FEBS J. 2016, 283, 1088.

多様なペプチドのN末端を修飾するPGM1の構造解析

大型の基質結合部位を有する酵素の構造を明らかにし、多様なペプチド修飾反応の分子基盤を示しました。

PGM1研究の成果詳細図
Nat. Chem. Biol. 2015, 11, 71.