研究成果

アガリクスKA21摂取による卵巣機能改善作用に関する特許を出願

富山大学 和漢医薬学総合研究所 未病分野 赤木一考助教は、東栄新薬株式会社(所在地:東京都三鷹市、代表取締役:元井章智)、至学館大学健康科学部 多田敬典教授と共同で行った、同社の露地栽培アガリクスKA21株(以下、アガリクスKA21)に関する研究成果として、アガリクスKA21摂取による卵巣機能の改善作用を確認しました。今回、この研究成果を受けて「卵巣機能改善組成物およびこれを含む医薬、飲食品および飼料」として特許出願を行いました。

■ 概要

<特許出願番号> 特願2024-147585

<提出日> 2024(令和6)年8月29日

<発明者> 赤木 一考、多田 敬典、元井 章智

<特許出願人> 東栄新薬株式会社、学校法人至学館、国立大学法人富山大学

 

<発明の名称>

卵巣機能改善組成物およびこれを含む医薬、飲食品および飼料

<技術分野>

本発明は、卵巣機能改善組成物およびこれを含む医薬、飲食品および飼料に関する。

 

■研究の背景

先進国を筆頭に、世界的に少子高齢化が進行しており、抗老化作用および抗生殖老化作用を示す医薬品や食品の開発が望まれています。

赤木助教は、東栄新薬株式会社より提供された露地栽培アガリクスKA21*1, 2株乾燥子実体を5%含むエサを、メスのキイロショウジョウバエに摂取させることで寿命が延びることを明らかにしていました。その作用機序を明らかにする過程において、至学館大学健康科学部 多田敬典教授と共同でRNA-seq解析を行った結果、露地栽培アガリクスKA21が卵巣へ作用する可能性が示唆されました。

■研究の内容・成果

露地栽培アガリクスKA21株乾燥子実体を5%含むエサをメスのキイロショウジョウバエに、35日間摂取させ、卵巣を顕微鏡で撮影して卵巣サイズの変化を確認したほか、個体ごとに24時間内における産卵数を計測しました。その結果、KA21の摂取によって1)卵巣サイズが大きくなる傾向がある(加齢による卵巣サイズの低下が抑制される)こと、および、2)産卵数が顕著に増加する傾向がある(加齢による産卵数の低下が抑制される)ことが確認されました。

以上の結果から、アガリクス子実体の処理物を投与することで、卵巣機能が改善されることが確認されました。

■サプリメントとしての応用の可能性

露地栽培アガリクスKA21は加齢による卵巣機能の低下を抑制することから、以下への応用が期待されます。

  1. ヒトの不妊治療分野でのサプリメントとしての応用*

(*EDや性欲減退などの改善を目的とした特許出願済みであることから男女兼用として利用可能)

  1. 卵巣機能の低下を緩やかにするため、サプリメントとして更年期障害の症状緩和作用が期待されます
  2. ペット、畜産系での出産数の増加を目的としたサプリメント、飼料としての活用が期待されます

【用語解説】

※1)アガリクスについて

アガリクスは、補完代替医療の分野で健康食品・サプリメントとして広く利用されているキノコの1種です。「菌株、栽培条件や産地により、その特性や含有成分が異なる」、「アガリクス含有製品には、製品により品質に大きな違いがある」とされています。

 ※2)ブラジル露地栽培アガリクスKA21株(アガリクスKA21)

ブラジルでキング・アガリクス21(=KA21)株を使用して、太陽の下、露地栽培されたアガリクスです。暗所で栽培される通常のハウス栽培アガリクスに比べ、サイズは大きく育ち(図1)、主要成分のβ-グルカンやビタミンDなどを多く含み(*A)、抗酸化活性が5倍以上(*B)といった特徴があります。

(*A) 日本食品分析センター調べ

(*B) Tajima et al., Int. J. Med. Mushrooms, 2020

図1 ハウス栽培アガリクスと露地栽培アガリクスのサイズ比較

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2024.09.09 研究成果